2023年に日本国内で処方開始となり、メディカルダイエット業界に旋風を巻き起こしたマンジャロが、「ゼップバウンド」という名前に変わり、肥満症治療薬として2023/11/08に米国で承認を受け、処方開始となりました。
今後の日本での販売が待たれる状況です。
そんなゼップバウンドについて、本ページにて紹介していきます。
ゼップバウンドとは?
ゼップバウンドとマンジャロは全く同じ成分
ゼップバウンドは「GLP-1/GIP受容体作動薬」と呼ばれる薬の一種です。GLP-1/GIP受容体作動薬といえば、2型糖尿病の治療薬として国内外において広く使われている薬になります。しかし、過去の研究で体重減少効果がいくつも報告されており、海外で「ゼップバウンド」という名前で、肥満症の治療薬としてついに米国で認可がおり、販売開始となりました。
ここでいう肥満症とは、BMIが30以上の方、あるいはBMIが27以上で肥満に関する健康障害を1つ以上有する方をさします。
※「肥満に関する健康障害」には以下の項目が含まれます。
- 耐糖能異常・2型糖尿病
- 高血圧
- 脂質異常症
- 心血管疾患脳梗塞
- 睡眠時無呼吸症候群
主成分は「チルゼパチド」であり、マンジャロと同成分の薬になります。
GLP-1作用だけでなく、GIP作用も発揮
ゼップバウンドはGLP-1(グルカゴン様ペプチド)受容体だけでなく、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)受容体も刺激する薬になります。 これらはインクレチンと呼ばれるホルモンの一種であり、膵臓に働きかけることで血糖値の調整を行ってくれます。 GLP-1は消化管の動きを抑えてくれたり、満腹中枢を刺激することで食欲を減少させてくれる効果があります。 その一方、GIPは「レプチン」と呼ばれるホルモンを産生し、脂肪燃焼や代謝亢進の方向に働いてくれます。 このダブルの作用により、従来のGLP-1受容体作動薬よりも高い体重減少効果を期待することができるのです。
ゼップバウンドの体重減少効果はどれほどなのか?
ゼップバウンドの平均的なダイエット効果は72週(約1年6ヶ月)で約12-20%と言われています。
具体的に、ゼップバウンド(チルゼパチド)で体重減少を認めた、過去の研究をいくつか紹介していきます。
SURMOUNT-1試験 (Ania M Jastreboff et al. N Engl J Med. 2022 Jul 21:387(3):205-261.)
糖尿病を有さない肥満症患者2539人を対象
5mgチルゼパチド週1回投与群、10mgチルゼパチド週1回、15mgチルゼパチド週1回、プラセボ投与群を比較
→5mgチルゼパチド週1回投与群においては72週間で-15%(中央値)の体重減少効果を、
10mgチルゼパチド週1回投与群においては72週間で-19.5%(中央値)の体重減少効果を、
15mgチルゼパチド週1回投与群においては72週間で-20.9%(中央値)の体重減少効果を得ることができた、
と報告されました。
SURMOUNT-2試験 (W Timothy Garvey et al. Lancet 2023 Aug 19;402(10402):613-626)
BMI27以上の糖尿病患者938人を対象
10mgチルゼパチド週1回、15mgチルゼパチド週1回、プラセボ投与群を比較
→10mgチルゼパチド週1回投与群においては72週間で-12.8%(中央値)の体重減少効果を、,
15mgチルゼパチド週1回投与群においては72週間で-14.7%(中央値)の体重減少効果を得ることができた、
と報告されました。
ゼップバウンドの投与方法
週1回皮下注射を行う
ゼップバウンドは、マンジャロやオゼンピック・ウゴービといったGIP-1受容体作動薬と同様、皮下注射薬となります。週1回、決められた曜日に注射を行うことになります。
投与方法と投与量について
1つのキットには1回投与量のみの含有となっており、1回の注射でキットを使い切る形になります。
量は2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mgの6種類があります。2.5mgの週1回注射から開始し、4週間ごとに投与量を一段階ずつ上げていきます。維持量は5,10,15mgが推奨されています。効果を見ながら投与量を適宜あげていく形になります。
投与に際した注意点
1日の中でのどのタイミングでも投与可能ですが、必ず同じ曜日に投与をお願いします。
投与を忘れた場合、次回投与まで丸々3日間(72時間)以上ある場合は気づいた時点で直ちに1回分を投与し、その後はあらかじめ決められた曜日に投与してください。
次回投与まで丸々3日間(72時間)未満の場合は忘れた分は投与せず、次の投与予定日に1回分を投与してください。
【例】毎週金曜注射で2024/03/01(金)に1回分投与後、03/08(金)投与を忘れて
現在03/10(日)→03/10(日)に03/08投与分を投与し、予定通り03/15(金)に1回分投与
現在03/12(火)→03/12(火)に03/08投与分を投与し、予定通り03/15(金)に1回分投与
現在03/13(水)→03/08(金)投与分は投与せず、予定通り03/15(金)に1回分投与
また、週1回投与の定めた曜日を変更する必要がある場合は、前回投与から少なくとも丸々3日間(72 時間)以上間隔を空けるようにしてください。
【例】毎週土曜注射で2024/03/01(金)に1回分投与後、曜日の変更を行う場合
→03/05(火)以降であれば注射可能
ゼップバウンドの副作用
GLP-1受容体作動薬やGLP-1/GIP受容体作動薬全般に言えるものですが、胃のむかつき・嘔気・便秘・下痢といった消化器症状が見られます。ただ、長期の使用に伴い、消化器症状は次第に落ち着いていくことが殆どです。日常生活に支障をきたすレベルであれば投与量の調整などをおこなっていきます。
また、糖尿病治療薬として血糖値を下げる作用もあるということもあり、低血糖の報告もあります。ただ、GLP-1受容体作動薬およびGLP-1/GIP受容体作動薬は、他の糖尿病薬と比較しても低血糖を起こしづらい薬となっています。特に、インスリン分泌を促す糖尿病薬(SU薬など)やインスリンと併用した際にリスクが高くなる、と言われております。
重大な副作用として膵炎の発症が報告されています。頻度としてはそこまで多くはありませんが、強い腹痛が見られた場合には、最寄りの医療機関を受診し、診察を受けるようにお願いします。
また、過去の動物実験にて、チルゼパチドの投与期間・投与量に比例して、甲状腺髄様癌や多発性内分泌腫瘍(MEN)2型の数が増えたという報告もあります。チルゼバチドがどのような機序でこれらの疾患の発現に関わるかは明らかになっていませんが、過去にこれらの病気にかかったことがある方、これらの病気にかかった家族がいる方へのゼップバウンドの処方は禁忌となっています。
まとめ
マンジャロと同成分の薬であるゼップバウンドがついに海外にて「肥満症」に対する治療適応となりました。胃・腸の動きを抑制するとともに満腹中枢を刺激することで食欲をコントロールし、結果として食事摂取量が減り、体重減少につなげることができます。胃腸の動きが抑えられる分、腹満感や嘔気、便通異常などの副作用がみられることがあります。これらの消化器症状は自然と身体が慣れてくることが多いですが、一方で甲状腺腫瘍や膵炎などのリスクもあり、注意が必要です。
※2024/02/29現在、記載されている内容は全てFDA(アメリカ食品医薬品局)からの案内になります。
日本国内でこれらの内容が全て当てはまるわけではない可能性があることをご了承ください。
※2024/02/29現在、日本での処方はできません。